FXは為替相場の環境分析が重要?勝てる環境と負ける環境の違い

FXは株と比べて取引コストが安く、スマートフォン1つで投資が行える魅力があります。また、為替相場はほぼ24時間開いているのでいつでもトレードできます。
しかし、こうしたお手軽さは安易なトレードで損失を膨らます要因でもあり、トレード前の環境分析を疎かにしている場合が少なくありません。
- FXの魅力と危険性
- 毎日トレードする必要はない
- 為替相場の環境分析の重要性を確認
- 為替相場の環境分析を実践する
- トレードして勝てそうな相場か判断する
- FXでいう負けやすい環境とはどういう状況なのか
- 為替相場の環境分析をさらに精度良くするコツ
- まとめ
FXの魅力と危険性
FXは口座開設がインターネットで完結し、証拠金を口座に預け終われば直ぐにトレードを始める点でとてもお手軽に始められます。他方、一攫千金を狙って大きな取引単位でトレードすると酷い目に遭う危険性があります。
FXの魅力
FXの魅力はスマートフォン1つあれば、いつでもどこでもトレードできること、取引コストがスプレッド以外に発生しないこと、通貨同士の取引なので、株のように倒産で価値ゼロとなる危険がないことなど沢山あります。
外国為替市場はほぼ24時間開いているので、会社帰りやお昼休みのちょっとした空き時間にチャートを見ながらトレードしたいサラリーマンや、家事や育児に忙しい主婦の方でも家事や育児の合間にトレードに参加することができます。
自由に気軽に始められ、難しい知識はなくてもインターネットにつながる環境だといつでもトレードできる点、それがFXの魅力と言えそうです。
FXの危険性
また、為替市場の相場環境に影響を及ぼす上で、ヘッジファンドや金融機関など毎日大金を動かしている機関投資家が有利であることは否定できず、僅かな証拠金でトレードに参加している個人は、こうした機関投資家など大口投資家の格好の餌食となりかねません。
沢山の魅力があるFXですが、トレードに参加している人はFXを始めたばかりの初心者から、FXで生計を立てている専業トレーダー、そしてヘッジファンドや金融機関のプロトレーダーなど毎日大金を動かしている機関投資家まで様々です。
FXは投資といっても実のところは証拠金の取り合いです。弱肉強食かつゼロサムゲームの典型で、買った人が手に入れるお金は負けた人が支払うお金です。
毎日トレードする必要はない
特に専業を目指して相場のトレードの経験を沢山積んで、早く稼げるようになりたいと毎日トレードする方、常にポジションを持っていないと時間のムダと感じる方は少なくないようですが、トレードの回数が増えるほど負ける回数も比例して増えるのがFXの特徴です。
FXでよくあるパターンで「コツコツドカン」というものがあります。これは毎日トレードしてコツコツ稼げたとしても、一回の失敗トレードでその大部分を失うという状況を表すものです。
コツコツと連続的にお金を殖やしていくと、「相場は簡単」と勘違いしてしまい、「トレード回数を増やして早く目標金額までお金を殖やしたい」と欲や慢心が出ます。こうした欲や慢心がトレードでは大きな落とし穴となることがよくあります。
為替相場の環境分析の重要性を確認
「手っ取り早くお金を殖やしたい」という気持ちが強いと、相場がATMに見えてしまう場合があるかもしれません。しかし、相場はATMではなく多くの猛者が参加する騙し合いに近い厳しい世界です。相場に参加するのは容易ですが、相場に大事なお金を取られないようにするためには、相場に参加する前に周到な準備作業が必要で、その準備作業が相場の環境分析です。
短期足チャートだけのトレードは「木を見て森を見ず」の典型
FXはスマートフォン1つあれば、いつでもどこでもトレードできますが、スマートフォンの画面で複数のチャートを表示するのは難しいのではないでしょうか。またチャートを監視している時間がそう長くとれない場合、1分足や5分足の短期足チャートしか見ないこともあるでしょう。
ちょっとした空き間時間にチャートを見ながらトレードできるのはFXの魅力ですが、FXでお金を失う「落とし穴」でもあります。短期足チャートは長期足チャートの一部を切り取ったものに過ぎず「木を見て森を見ず」のトレードとなって金を失っているのです。
例えば短期足チャートでレートが下落しているので、売り注文を入れたらその後直ぐに上昇を始めたという場合だと、長期足チャートを確認したらレートはアップトレンドで、実は押し目だったということ、逆に短期足チャートでレートが上昇しているので、買い注文を入れたらその後直ぐに下落を始めたという場合だと、長期足チャートを確認したらレートはダウントレンドで、実は戻りだったということはよくあるパターンです。
短期足と長期足の本質は同じ
短期足と長期足の本質は同じチャートを時間間隔というレンズを変えて見ているに過ぎません。短期足チャートは値動きが激しく、トレードチャンスは多いように感じるので、「空いた時間にパパッと稼げるのでは」と感じますが、長期足チャートで見れば殆ど値動きがない膠着相場であることが多いです。
短期足という一部で判断して、長期足という全体を確認しないトレードはFXで負けやすい人にありがちな傾向です。正しい流れとしては長期足という全体を確認し、トレードで勝てそうか判断し、勝てそうと判断できればその後で短期足で注文を出すタイミングを計るというのがオススメです。
長期足という全体を確認し、トレードで勝てそうか判断する作業は、トレードをする以前に必要な環境分析とも言えます。株取引と比べてレート変動が早いFXこそ、相場の環境分析が重要なのです。
為替相場の環境分析を実践する
為替相場の環境分析は様々な手法がありますが、最もシンプルなのは世界中のトレーダーが見ているとされる日足のチャートのローソク足をよく観察することです。
ローソク足とは

為替相場の環境分析に先立ち、まずローソク足とはいったい何を表しているのかについての知識が必要です。ローソク足は四本値という四つの価格で表記されるもので、一定時間間隔内の始値と終値、および最高値と最安値のそれぞれ四つの価格を基本として描画されています。
ローソク足は始値と終値で「本体」部分、本体部分の上端から最高値までの「上ヒゲ」、本体部分の下端から最安値までの「下ヒゲ」で構成され、「上ヒゲ」の長さは価格を最高値から引き下げようとする力、「下ヒゲ」の長さは価格を最安値から引き上げようとする力の大きさに比例して長くなります。
ローソク足だけでできる環境分析
1日のうちでトレードを完結するデイトレードは、日足のローソク足1つの形状を予想する作業となります。予想が正しければ勝てますし、誤っていれば負けます。当日のローソク足の形を正しく予想するのはムリですが、予想の精度を向上させることは可能です。
環境分析といっても、やることは当日のローソク足の形状と前日のローソク足に対して、現時点の価格がどの位置にあるかを確認するだけです。
トレードして勝てそうな相場か判断する

ローソク足の形状はローソク本体と上下のヒゲで構成されています。ローソク単体で相場を見た場合にローソク本体の長さと上下のヒゲの長さで勝てそうな相場かどうかの目安をつけることができます。
勝てそうな相場環境はローソク本体が長く、上下のヒゲがあまり出ていない形状が見られるときです。一方でローソク本体が極端に短く、上下に長いヒゲが出ている形状が見られるときは相場が膠着状態となっていて、値動きの方向がはっきりしない相場となっていることが多く、トレードで良い結果を出しにくいと判断できます。
相場が動き出す価格、サポートとレジスタンスに目安をつける
当日のローソク足における現時点の価格が前日のローソク足に対してどの位置にあるかを確認することは重要です。現時点の価格が前日のローソク足の始値と終値の間にあれば、そのまま始値と終値を往復することが多く、始値と終値を超えれば、そのまま一方向に動き出すかどうかに注目します。
前日ローソク足の始値と終値を超える瞬間は、価格が一方向に動き出すきっかけになりやすいので、トレードの狙い目になります。始値と終値を超えた値動きは最初の支持線(サポート)となる、もしくは抵抗線(レジスタンス)となる価格まで動き続ける場合が多いですが、そうした最初の支持線(サポート)となる、もしくは抵抗線(レジスタンス)となる価格は、前日ローソク足の下ヒゲの下端や上ヒゲの上端付近にあると市場関係者は意識しています。
前日と当日のローソク足の長さを比べる

前日と当日のローソク足の長さを比べることでも相場の環境を知ることが出来ます。前日の方が当日よりローソク足が長い「はらみ足」に近い状況では、当日の相場環境は前日の大きな値動きの調整で膠着状態に入っていることが多いです。
よりトレードに適するのは、前日と当日のローソク足の関係が「はらみ足」に近い状況ではなく「はらみ足」に近い状況から上値更新又は下値更新方向に抜け出す兆候が明らかになっている相場環境です。
FXでいう負けやすい環境とはどういう状況なのか
FXでいう負けやすい環境について、次の三つのケースに分けて解説します。
- 価格変動に方向性がない相場
- 価格変動に勢いがない相場
- テクニカル分析が効かない相場
価格変動に方向性がない相場
価格変動に方向性がない相場とは、トレード参加者が少ない、様子見している人が多い相場です。年末のクリスマスを控えた前後や、取引材料のない時間帯や日で見られます。
こうした相場環境では、値幅が小さいので逆張りに専念してスキャルピングに徹しても、スプレッド負担が大きくなりますので、リスクに見合うリターンは期待できません。
値動きが少ない分、一定の利益に到達するまでポジションを保有し続ける必要がありますが、ポジションを長くもつことで、相場の急変に巻き込まれて大きな含み損を抱える危険が高くなります。
価格変動に勢いがない相場

出来高が伴わない相場は、価格変動に勢いがない相場となります。こうした相場はヘッジファンドなど大口の機関投資家たちの価格コントロールが効きやすい相場となりやすく、迂闊にトレードすると危険です。
2019年1月のフラッシュクラッシュによる暴落は、ニューヨーク市場の閉場直前の出来高が極端に少なくなる相場環境が狙われることで発生したと言われています。価格変動に勢いがない相場は少ない取引高でも大きく値が動くことがあるので負けやすい相場環境と考えていいでしょう。
フラッシュクラッシュによる暴落の時、オーストラリアドル・円の通貨ペアでは僅か15分の間に5円以上下落しました。この暴落で途方もない金額の損失を被った人は相当数いたようです。
テクニカル分析が効かない相場
価格変動に方向性があり、勢いがあってもFXでいう負けやすい環境は存在します。それはテクニカル分析が効かない相場です。
例えば要人発言や重要な経済指標の公表直後などは、価格が一瞬で乱高下するテクニカル分析が効かない相場となることが多いですが、こうした相場は「上か下か」の博打に近いトレードになります。
たまたま注文と価格変動の方向が一致して大きな含み益が出たとしても、直後に価格が逆方向に大きく動いて、含み益どころか含み益の倍以上の含み損になったということも多いです。
為替相場の環境分析をさらに精度良くするコツ
日足のローソク足を使って基本的な相場環境を分析することに加えて、さらに注目する内容を工夫することで相場の環境分析をさらに精度良くすることができます。
通貨ペアではなく通貨を需給に注目
通貨ペアのレートが上がるか下がるかは、ペアを組む通貨同士の強弱に依存します。強い通貨とは市場で買いたいと思っている人が多く、実際に買われている通貨です。弱い通貨とは市場で売りたいと思っている人が多く、実際に売られている通貨です。
通貨ペアではなく通貨の需給に注目し、最も強い通貨と最も弱い通貨の通貨ペアを選んでトレードすることが、最も勝ちやすく負けにくいトレードを実現します。為替トレーダーが様々な通貨ペアをマルチスクリーンで表示して、その全てを常にチェックしているのはこうした理由が背景にあります。
通貨ごとの値動きのクセに注目
通貨ごとの値動きのクセに注目することも為替相場の環境分析をさらに正しくする上でポイントになります。こうしたクセはトレードの経験が増えるとなんとなく分かってくるものです。
例えば、市場関係者がリスク回避を優先している場合は安全通貨として知られている日本円やスイスフランが買われます。逆にリスクオンが意識されている時は、高金利通貨が積極的に買われます。
その他に、通貨同士の相関関係という点にも注目したいところです。例えばユーロとイギリスポンドは同じヨーロッパ圏の通貨同士として相関性が高い、カナダドルやオーストラリアドルはイギリス連邦に加盟する国の通貨ということで、イギリスポンドとの取引上の関係性が強いなど、通貨ごとに様々な特徴と値動きのクセを有しています。
まとめ
FXではトレードを始める前の相場環境の見極めがとても重要です。空いた時間を見つけてスマートフォン片手にトレードできる敷居の低さと、手っ取り早く稼ぎたいという気持ちが先行してしまい、ついつい相場環境の見極めが甘くなり、儲けるどころか損ばかりということになりがちです。
相場環境の見極めは、「森を見てから木を見る」ことの実践です。そのこと自体はトレードに直接関係しませんが、勝ちにくい相場でトレードしてお金を減らすという結果をなるべく少なくできます。こうした見極めの精度を高めるための技法を研究し、ルールとして確立し、それを遵守することが、厳しいFX相場で生き残ることができるかどうかを左右することになるのです。