FX会社が倒産したら投資家のお金はどうなる?

FX会社が破綻してしまった場合、入金した資金はきちんと返却されるのかご存知でしょうか?結論から言えば、国内のFX会社であれば万が一、会社が破綻した場合でも顧客が入金している資金は全額戻されなければならないことが法律で定められています。ですのでFX会社に入金している資金は全額戻って来ます。
これは国内のFX業者には「信託保全」という仕組みが義務化されているため、顧客の資産は安全に管理されることになっているからです。
ここでは、顧客の資産を守る「信託保全」について解説したいと思います。
- 2010年から顧客の資金の全額保全を義務化
- 「信託保全」という投資家を守る制度の仕組み
- 信託保全の種類
- 海外FXでは全額信託保全制度を取り入れていない業者も。口座開設前に要チェック
- 信託残高の更新は「日次信託」がベスト
- 資金は全額返還されるがポジションは基本的に強制決済される
- FX業者の安全性は各会社のHPで公開している「自己資本規制比率」でチェックすることが可能
2010年から顧客の資金の全額保全を義務化
顧客の資産の全額保全がFX会社に義務付けられたのは2010年2月のことです。
これは2008年に起こった世界同時不況により倒産したFX会社が投資家に入金した資金を返せないという事態が相次ぎ、資金を失う被害を受けた投資家が多くいたためです。
中には顧客の証拠金を会社の資金に流用した上で倒産した悪質な業者もいたので、金融庁では入金した資金はたとえFX会社が破綻しても全額が守られるように管理しなければならない旨の制度が敷かれました。
「信託保全」という投資家を守る制度の仕組み
信託保全とは簡単に言えばFX会社の運営資金と顧客の資金を別々に管理して、さらに顧客の資金は第三者である信託銀行又は信託業務の兼営の許可を受けている銀行に管理してもらうという制度のことです。
FX会社で独自に資金を分けるだけではなく、信託銀行に管理を依頼することで顧客の資産が安全に管理され、万が一FX業者が破綻した場合でも顧客の資産は差し押さえの対象にされることもありません。
【平常時の顧客資金の流れ】

顧客がFX業者に資金を入金すると、FX会社から信託銀行に資金が預けられます。顧客が資金を出金するときは信託銀行から資金を出金し、顧客へ入金されます。
FX業者と信託銀行のほか、「信託管理人(受益者代理人)という第三者がFX会社の信託状況と信託銀行の信託残高報告書を随時確認しています。
信託管理人は外部の弁護士や会計士、金融庁長官指名者などが投資家の代理人として任命されています。
【FX業者破綻時の顧客資金の流れ】

FX業者が破綻した場合、信託管理人(受益者代理人)が信託銀行から顧客に証拠金を返還する業務を行います。
この仕組みを「全額信託保全」といい、入金した資金、ポジションの評価損益、スワップ金利がすべて顧客に戻る仕組みになっています。
国内のFX会社ではこの「全額信託保全」が義務付けられています。
ここまでの解説でFX業者が破綻しても資産が全額守られることは分かったけど、預入先の信託銀行が破綻したらどうなるの、という疑問が出てくるかもしれません。
信託銀行の破綻は考えにくいことですが万が一破綻してしまった場合でも「信託法」により顧客の資産は全額守られますので安心してください。
信託法28条では信託銀行に信託された資金は信託銀行の資産とは分別して管理することが義務付けられています。さらに、信託銀行が破綻してしまっても、分別管理している方の信託資産は差し押さえの対象から外れます。
つまり、信託銀行が破綻しても顧客の資産は全額安全に保護されます。
信託保全の種類
FX業者の資金管理は主に以下の3種類です。
- 全額信託保全(完全信託保全)
- 一部信託保全
- 分別管理
全額信託保全
顧客資金の証拠金、評価損益、スワップ金利をすべて信託銀行に預け入れる方法です。
一部信託保全
顧客資金の証拠金、評価損益、スワップ金利の一部を信託銀行に預け入れる方法です。
一部信託保全の場合、顧客1人あたりの上限または会社全体の資金の上限が各社で取り決められていて、その分だけを分けて保管します。
分別管理
分別管理ではFX業者の資金と顧客の資金を分けて管理しますが、信託銀行には預託しません。第三者が資金の管理を行わない方法となりますので、信頼性には欠ける方法です。
国内FX業者には全額信託保全が義務付けられていますので、日本国内のFX業者はすべての資金を安全に管理しています。
海外FXでは全額信託保全制度を取り入れていない業者も。口座開設前に要チェック
ハイレバトレードとゼロカット制度で人気の高い海外FX業者ですが、国内FX業者のように全額信託保全が義務付けられていません。
実際に全額信託保全ではなく、一部信託保全を採用している業者も多数あるので海外FXに興味がある場合は日本のFX業者との資金管理の考え方の違いを知っておきましょう。
海外FX業者 | 信託保全の内容 |
TitanFX | 全額信託保全 |
LAND-FX | 一部信託保全 顧客1人あたり最大5万ユーロまで補償 |
XM | 一部信託保全 顧客1人あたり最大2万ユーロまで補償 |
HotForex | 一部信託保全 顧客1人あたり最大2万ユーロまで補償 |
表を見ると分かるように、TitanFXは全額信託保全を採用していますが、XM、LAND-FX、HotForexでは一部信託保全を採用しています。
ただ、海外FX業者の場合は全額信託保全を義務付けられてはいませんがそれが危険というわけでもなく、投資家補償基金(ICF)や金融サービス保証機構(FSCS)などの世界的な金融規制当局の厳しい監督の中で金融ライセンスを取得し、きちんと分別管理が行われている業者がほとんどです。
信託残高の更新は「日次信託」がベスト
全額信託保全の国内FX業者にさらに安全性を求めるなら各社の信託残高の更新のタイミングをチェックしておきましょう。「信託残高の更新」とは入金したお金を信託銀行に預け入れる、または出金分を信託銀行から引き出すという意味です。
FX業者では毎日為替相場の値動き、顧客の資産状況も毎日変わります。信託保全には信託残高を毎日更新する「日次信託」と週に1度更新する「週次信託」があります。
安全な資金の管理を徹底するなら日次信託を採用しているFX業者がおすすめです。週次信託は1週間に一度しか信託残高が更新されませんので、1週間の間に為替が急変した場合、その分の損益は保全対象とならないからです。
ただ、安心していただきたいのは、国内のFX会社のほとんどが日次信託を採用しています。
FX業者名 | 信託先金融機関 | 信託設定日 |
外為どっとコム | 三井住友銀行 みずほ信託銀行 あおぞら銀行 | 翌々営業日以内 |
SBI FXトレード | 三井住友銀行 FXクリアリング信託 | 翌々営業日以内 |
GMOクリック証券 | 三井住友銀行 みずほ信託銀行 三井住友信託銀行 日証金信託銀行 | 翌々営業日以内 |
ヒロセ通商 | 三井住友銀行 | 翌々営業日 |
マネーパートナーズ | 三井住友銀行 みずほ信託銀行 | 翌々営業日 |
YJFX! | 三井住友銀行 みずほ信託銀行 | 翌々営業日 |
ほとんどの日次管理のFX業者は毎営業日の朝7時(夏時間は6時)までに入金された分を翌営業日に信託口座に入金しています。つまり、顧客が入金した時刻によって、最大で2営業日以内には信託設定がされることになります。
さらに、即時信託保全と言って顧客がFX業者に入金をするとすぐに信託保全されるというシステムを採用しているFX業者もあります。
SBIFXトレードでは即時信託保全を取り入れており、より安全に資産の保護をしています。
注意点は顧客が入金した証拠金のみが即時信託保全の対象となる事です。日々の評価損益、実現損益、スワップ金利の資産は多くの他業者と同じく翌々営業日までに信託保全されます。
このように、入金や損益を信託銀行に預託するまでには2営業日ほどのタイムラグがあるということは知っておいてください。
資金は全額返還されるがポジションは基本的に強制決済される
FX業者が破綻しても資金は全額守られますが、保有しているポジションは強制決済されるということは認識しておいた方が良いです。
破綻した当時に有利なポジションも不利なポジションも同様に強制決済となりますので、たとえ資金が全額守られると言っても破綻の心配のない安定経営をしているFX業者を利用することが大切です。
くりっく365は高確率でポジションを継続できる
通常のFX取引の場合、FX業者が破綻したらポジションは強制決済されますが、くりっく365で取引している場合はポジションを継続できる可能性が高くなります。
くりっく365は通常のFX業者の取引とは異なり、東京金融先物取引所に上場されている為替商品となりますので、顧客の資金は信託銀行ではなく、取引所に預託され、東京金融取引所では資金全額を取引所の資金とは別に管理しています。
この為、ポジションも上場商品ですので、「金融取が認める場合」にはという条件付きではあるものの、他のくりっく365取り扱い業者にポジションをそのまま移管することができます。
上場されている商品というだけあって株式と似ていて、利用するFX業者が変わるだけでポジションは高確率でそのまま維持することが可能です。
FX業者の安全性は各会社のHPで公開している「自己資本規制比率」でチェックすることが可能
自己資本比率は為替変動やその他の原因により発生するリスクにFX業者がどれくらいの余力を持っているのかを示す値です。FX業者は金融庁から自己資本規制比率120%以上を維持することが義務付けられており、自己資本規制比率が定める値を下回った場合、金融庁から指定された決まりに従って報告や業務を停止しなければなりません。
自己資本規制比率が
- 140%を下回った場合:金融庁への届け出
- 120%を下回った場合:新規口座開設受付停止
- 100%を下回った場合:3ヵ月以下の業務停止又は登録抹消
という厳しい決まりがあります。
自己資本規制は高いほど健全性が高く、破綻リスクが低いと言えます。
FX業者の自己資本比率は各社の公式ホームページで公開され、定期的に更新されていますので、口座開設前にはチェックしてみると良いでしょう。
各FX会社の自己資本規制比率
SBI FXの自己資本規制比率:1,221.7%
ヒロセ通商の自己資本規制比率:516.3%
GMOクリック証券の自己資本規制比率:448.5%
マネーパートナーズの自己資本規制比率:351.6%
<平成30年12月末日現在>
200%を上回っていれば根太く丈夫なFX会社であると言え特に心配する必要も無いと言えます。
国内FX業者であれば特に心配する必要なし
顧客の資金を守る制度の信託保全について解説してきましたが、国内FX業者であればすべての会社に全額保全が義務付けられていますので、もしものことがあったとしても特に心配する必要はありません。
安全性に優れた会社を選ぶためにFX口座を開く際には自己資本規制比率が300%以上であること、知名度が高く人気のFX会社から選べば安心してFX取引をすることができます。
ただ、日々のトレードの資金管理は自分のリスク管理で行うことになります。自分で決めたリスクの範囲内で資金管理を行い、堅実に資産を増やしていきましょう。